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アコギ演奏のテクニック
アコギの演奏にはコード演奏だけでなく、
様々な表現方法ができるテクニックがあります。
アコギでは「弾き語り」や「バッキング伴奏」のように「コード演奏」が主体になりますが、
コードチェンジの際のちょっとしたタイミングにテクニックを入れることができます。
また「ソロギター」の際の「単音演奏」をする際などは、
様々なテクニックでより直接的に演奏の表情を豊かにすることができます。
アコギとエレキともに10年以上演奏してきた筆者が、アコギで特に映える・使いやすいものを中心に解説いたします。
アコギテクニックその1/「ハンマリングオン(ho)」と「プリングオフ(po)」
「ハンマリングオン(ho)」と「プリングオフ(po)」では、
ピッキングとは違う、音が途切れず滑らかに続く印象の音が出せます。
ピッキングで鳴らすより輪郭のぼやけた音になるため柔らかな印象になります。
滑らかに「音程を上げたい」場合は「ハンマリングオン(ho)」を、
「音程を下げたい」場合は「プリングオフ(po)」となります。
どちらもはじめに、押さえている弦をピッキングしてからスタートとなります。
音程を上げる「ハンマリングオン(ho)」
TAB譜上では「h」や「ho」と表記されます。
特定のポジションを押さえた状態でピッキングしてその状態をキープしつつ、
出したい高音程のポジションを押さえる(叩く印象です)と「ハンマリングオン(ho)」になります。
大抵最初の音を人差し指で押さえつつ、薬指で全音高いポジションを叩いていくことが多いです。
音程を下げる「プリングオフ(po)」
TAB譜上では「p」や「po」と表記されます。
特定のポジションを押さえた状態でピッキングしてその状態をキープしつつ、
あらかじめ低い音程のポジションを押さておき、
はじめに弾いたポジションから指を引っかけながら離すと「プリングオフ(PO)」になります。
大抵最初の音を薬指で押さえつつ、あらかじめ人差し指で全音低いポジション押さえておくことが多いです。
薬指を下斜めに弦へ引っかけながら離します。
「ハンマリングオン(ho)」と「プリングオフ(po)」の余談
「ハンマリングオン(ho)」と「プリングオフ(po)」を連続して行うことで、
より早いフレーズの演奏に対応することができます。
逆にハンマリングオンとプリングオフを用いずにすべてピッキングで演奏することを「フルピッキング」と呼んだりします。
素早くハンマリングオンとプリングオフを繰り返すことで、
「トリル」や「レガート」と呼ばれるフレーズになります。
この際にピッキングする手の人差し指(ピックをお持ちの場合は中指で)で、
ハンマリングオンプリングオフの箇所よりもハイポジションを押さえると「タッピング」にもなります。
アコギテクニックその2/「スライド(s)」
「ハンマリングオン(ho)」と「プリングオフ(po)」と同じく滑らかに音を出す表現方法です。
音が上がる場合を「スライドアップ」、下がる場合を「スライドダウン」とも呼びます。
TAB譜上では「s」と表記されます。
スライドでは、例えば5フレットから8フレットへのであれば、
5フレット・6フレット・7フレット・8フレットとフレット間を続けて滑らかに出音することができます。
また移動した終わったあとのポジションでの演奏がより便利にもなります。
加えて速さを変化させることで、音の移動の滑らかさを任意に調整できます。
スライドのスピードを溜めたりもたつかせたりすることにより、
より表情豊かなニュアンスを表現できてたのしいです。
多用することでロックやブルース風のニュアンスも表現できます。
アコギテクニックその3/「ミュート(m)」
音が鳴る必要のない弦へ指を軽く触れることで振動を消し、音を消すことを意味します。
TAB譜上では「m」と表記されます。
実際に出す音に必要がなく、リズムの数を合わせる必要がある場合などに使用します。
効果的に使用すると演奏にとても勢いが出ます。
方法を大きく分けると2つあり、
- 1.バレーコードの人差し指を実際に弦を押さえずに上に乗せた状態で、中指以下で押弦してピッキングする
- 2.ネックを握りこんで(「ロックフォーム」と呼ばれる構え方です)親指部分で6弦など低音弦へミュートをかける
というものがあります。
1のフォームでミュートをしてストロークするとチャカチャカとロック風になります。
また人差し指でバレーしてミュートをかけつつ、
他の指でミュート箇所より高い音程のポジションを単音を押さえてピッキングをすると、
ソウルミュージックやAOR系などに多用される「カッティング」になります。
2の方は基本コードのDやAなどを出す際に不要になる音を出す弦、
6弦や5弦の音が出ないようにする際などに使います。
コード演奏の際のミュート
単音演奏だけでなく、コード演奏の際にも使用されています。
コードフォームを押さえながら他の余分な弦を鳴らさないようにあえて指を立てきらずに、
他の弦へ軽く指を触れさせておくこともミュートの一つです。
コードを押さえてアルペジオ演奏の際など役に立ちます。
アコギ演奏ではバンドサウンドやエレキギターの演奏と異なり、
余計な音が出てしまうと悪目立ちしてしまいとても勿体ない演奏になってしまいます。
特に注意して身に着けていきましょう。
ミュートのバリエーション/ブリッジミュート
通常のミュートと違い、指板で押さえた音がこもった伸びない状態で出るタイプのミュートです。
静かな印象で演奏する場合などに使います。
右手(ピッキング側の手)の側面をボディのサウンドホール上、ブリッジ付近に乗せます。
その状態のままピッキングしていくと「ブリッジミュート」のサウンドが得られます。
例えばメロ部分をブリッジミュートで演奏し、
サビ部分でブリッジミュート無しで演奏すると強弱がはっきりとついた演奏になります。
低音弦で、「ザクザク」というリズムを刻むフレーズにもよく使われます。
アコギテクニックその4/「ビブラート(b)」
サステイン(音の伸び)を得るために行います。
TAB譜上では「b」と表記されます。
アコギで演奏するロックやポップスの場合はネックを握りこんで縦にかけることが一般的です。
細かなチョーキングアップとチョーキングダウンを繰り返すようなイメージです。
クラシックはネック幅が広いことや曲調的に横に緩やかにかけます。
細かなスライドアップとスライドダウンを繰り返すようなイメージです。
アコギ演奏ではバンドサウンドやエレキギターの演奏の際より、音の数が少なく残響音が目立ちます。
そのため一定のスピードを保ったビブラートを習得するとより印象の良い演奏になります。
アコギ単体ではあまりありませんが、「チョーキング」と合わせると「チョーキングビブラート」にもなります。
アコギテクニックその5/「チョーキング(cho)、ベンディング」
フレット間の移動よりもより細やで繊細に、感情的に音の変化を表現できます。
英語圏では「ベンディング」と呼ばれています。
TAB譜上では「c」や「cho」と表記されます。
主にエレキギターのソロパートの際の主役になる奏法です。
アコギの場合は弦の太さや指板の太さの制約があることもあり、
もっと落ち着いたニュアンスの表現になります。
「ブリッジミュート」をチョーキングする弦の手前の弦までかけつつ、
「チョーキング」を行うと迫力のある「ブラッシング」になります。
アコギテクニックその6/「スラップ(slap)」
スラップ本来はベース演奏の際のテクニックですが、アコギにも映えます。
TAB譜上では開始地点から「slap」と表記されていることが多いです。
親指で低音弦(6,5弦)をヒットし、人差し指や中指や薬指などでプル、引っ掻けて音を出します。
低音弦に対する親指のヒットする演奏フォームはそのまま、
リズムを取るための「ストリングヒット(サムヒット)」に流用できます。
アコギテクニックその7/「ストリングヒット(サムヒット)」
アコギ演奏でリズムを取る際に用います。
「チャッ」と鳴る音のことです。
ピック使用時にはとてもやりにくいため、基本はフィンガーピッキングの際に用います。
フィンガースタイルでのアコギ一本の弾き語りや特にソロギターは欠かせないテクニックになっています。
演奏時の2小節目と4小節目などに周期的に加えていくことで、一定のリズムキープを表現できます。
親指の側面をサウンドホール上の6弦または5弦に振り下ろすイメージで叩いていきます(実際に当たっているのは親指のお腹の側面です)。
指を弦に振り下ろすと、指の当たった弦がしなって指板のフレットに当たります。
その際に「チャッ」という音が発生します。
早いテンポの曲でなくとも、スローテンポの曲でも活用していくことができます。
アコギテクニックその8/オクターブ奏法
ジャズギタリストのウェスモンゴメリによって広まった奏法です。
オクターブ違いの音を出して厚みを得てバッキングなどに用います。
バンド系の音楽のイントロなどでもよく耳にしますね。
バレーコードのように人差し指ぜんぶ押さえなくとも、
パワーコードのようにバッキングフレーズにも、
メロディを演奏するフレーズにも用いることができます。
アコギテクニックその9/「グリッサンド(g)」
「グリッサンド」はスライドとは違い、
動いた先または動かす元の場所のポジションを決めずにスライドさせるテクニックです。
TAB譜上では「g」と表記されています。
ボディ側からヘッド側への動きを「グリスダウン」、
ヘッド側からボディ側への動きを「グリスアップ」に分類します。
6弦で「グリスアップ」→「グリスダウン」というように素早くサビ前などに入れると効果的です。
演奏に勢いがでます。
が、少しロック的な演奏に傾き過ぎてしまうかもしれないため用法用量をご検討ください。
アコギテクニックその10/ハーモニクス(「ポーン」音)
実際の指板を押さえて出せる音よりも高い音を出す方法です。
大きく分けて2種類あり、
アコギではナチュラルハーモニクスを主に使います。
ナチュラルハーモニクス
「ポーン」という高い音を出す方法です。
アコギの演奏に雰囲気にマッチした音です。
12フレットの上に人差し指を触れさせた状態で弦を弾くとハーモニクス音が出せます。
曲の小節と小節の間に挟んだりすることで効果的に使用することができます。
5フレットおよび7フレット上でもナチュラルハーモニクスが使用できます。
ハーモニクスチューニングの際などにも活躍しますね。
余談/ピッキングハーモニクス
こちらは指板の押さえ方ではなく、ピッキング側でコントロールして音を出します。
ピックを使う方はピックを、
使わない方はピックを使うフォームにして人差し指を使います。
弦にヒットする際に親指と同時にあてていきます。
実際の押さえている弦よりも高いハーモニクス音が出せます。
ナチュラルハーモニクスと違い、
アコギではあまり使用することはありません。
アコギテクニックその11/スラム奏法
フィンランドのアコースティックギタリスト、
ペッテリサリオラ氏により広まったパーカッション奏法、「スラム奏法」です。
ストロークを行いながらドラムのバスドラム(大太鼓)、ハイハット、スネア(小太鼓)音を模した音を奏でていく、
とても大胆でリズミカルな奏法です。
基本的には4つの動作からなりたっています。
2.続いて爪でストロークします。
3.さらにストロークし終えた指で指板の最終フレット近辺のハイポジションを叩きスネアドラムを表現します。
4.最後に叩き終えた指をアコギを構えている自分の顔方向に弦を擦りながら払います。
基本動作としておりますが、
確立したものというよりそれぞれに自由に発展させて自分の演奏に取り入れているという状況が実情となっております。
YouTube上にペッテリサリオラ氏の公式動画や、
様々なギタリストの挑戦動画がありますので是非参考になさってみてください。
一定の動きの習得まで非常に難しいものがありますが、
一度習得してしまうと新しいアコギの楽しみ方が広がります。
「弾き語り」でもより迫力のあるダイナミックな表現ができますし、
「ソロギター」でも迫力のある表現ができるようになります。
単純にとっても楽しい奏法です。
まとめ
様々な表現方法を駆使して、アコギ演奏をより楽しんでいきましょう!